寛永15年(1638)
山号:万松山 臨済宗 大徳寺派
・江戸時代の初め、寛永15年(1683)に、三代将軍徳川家光が、名僧沢庵のために建てた寺。江戸時代きっての名刹で、157000平方メートル余りの広大な社寺を有していた。海晏寺と並ぶ紅葉の名所としても有名。
・徳川家光が沢庵を江戸にとどめ置くために、開山に迎えて創建した寺。
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沢庵漬け・たくわえ漬け=たくあんが考案された地でもある。「たくあん」は、家光の命名との説もある。
・江戸名所図会には、かつての広大な寺領が描かれている。
・狩野探幽の筆と伝えられている「沢庵和尚画像」ほか、文化財も多数。
・作庭は小堀遠州。
小堀遠州は奉行であり茶人であった。沢庵和尚が東海寺を開山した翌年寛永15年(1638年)には茶亭が完成。遠州は開山を命じた家光に茶を献じた。沢庵和尚は遠州に茶の湯を学んだことで信頼を寄せていたようである。大山墓地の大きな石で蓋をしたような沢庵の墓もまた遠州の作による。 明治維新を迎え、後ろ盾が失われると瞬く間に廃れ「奇麗さび」を愛した遠州作の庭はもとより、約4万坪と言われた境内の面影はなくなった。
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原爆犠牲者慰霊碑 広島市・長崎市より寄贈された「被爆石」が両脇に配置されている。
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大山墓地:沢庵・西村勝三・井上勝・渋川春海・賀茂真淵の墓、煉瓦職人の墓、島倉家の墓、服部南郭(柳沢吉保に仕えた儒学者)
・宝物
「絹本淡彩沢庵和尚像」(東京都有形文化財 絵画)
「原人論註解(沢庵筆)」(東京都有形文化財 典籍)
「東海寺建立公儀拝領」
「東海寺公用記録」(東京都有形文化財 古文書)
「梵鐘」「沢庵墓」
「東海寺拝領御道具帳」(東京都有形文化財 古文書)
「沢庵宗彭墨蹟(寛永16年)」(東京都有形文化財 古文書)
・座禅の会も月に2回行われている
写真=東海寺仏殿(世尊殿 せそんでん)昭和5年(1930)建築。本尊の釈迦三尊像をはじめ、閻魔王・帝釈天・達磨大師・地蔵菩薩・十六羅漢像などの仏像(いずれも木造)が安置されている。
■東海寺の七不思議(しながわ昔話)
東海寺は、寛永十五年(1638)に江戸幕府三代将軍徳川家光がたてたお寺で、沢庵和尚が最初の住職となりました。このお坊さんは将軍や多くの大名から尊敬されるほど立派な人だったことから、お寺もあつく保護されていました。そんな東海寺には、次のような七不思議が伝わっています。
一.片身のスズキ
東海寺には大きな池がありました。ある日、沢庵和尚がお寺に帰ると、台所ではお坊さんたちがまな板にのった大きなスズキに包丁を入れているところでした。和尚が片身のスズキに「喝!」と叫んで池に投げ込むと、スズキはたちまち元気に泳いで池の奥深くへと身をひそめ、いつしか池の主になり東海寺を守ったということです。
二.鳴かないカエル
お寺の大池にはカエルがたくさんいましたが、一度も鳴いたことがないそうです。これはあるとき、沢庵和尚があまりにもうるさいカエルに喝を入れたためと伝えられています。
三.片なりのイチョウ
東海寺のイチョウは、なぜか片方にばかり実がなったそうです。
四.潮見の石
東海寺に古くからある大きな石の水鉢は、潮が満ちるときには水がいっぱいになり、潮がひくときには少なくなってしまうそうです。これは、「潮見の水鉢」と呼ばれました。
五.血のでる松
山門のそばには一本の大きな松がありました。将軍がお参りするときにはじゃまになるので「じゃまの松」と呼ばれており、とうとう切られることになりました。のこぎりを引き出すと、切り口から赤い血がにじみだし、木こりの手はしびれてしまいました。そこで、お寺ではこの松を特別な木として大切に残すことにしましたが、切り口はずっと赤いままでした。
六.火消しのビャクシン
裏庭には、唐(中国)から持ち帰って植えられたというビャクシンの木がありました。ある真夜中のこと、沢庵和尚が「唐の金山寺が火事だ、起きろ!」と寺のお坊さんたちを呼び起こし、そのビャクシンの木に水をかけさせました。お坊さんたちは大変驚きましたが、しばらくして金山寺から「おかげで火が消えました」とお礼の品物が贈られたということです。
七.千畳づりの蚊帳
金山寺からのお礼は、桐の箱におさめられた蚊帳(蚊などを防ぐため、四隅をつって寝床をおおう道具)でした。「千畳づり」という大きさは見当もつきませんが、当時としては日本一だったことでしょう。
【今の東海寺】
江戸時代の東海寺は広大な敷地を持ち、敷地内にはたくさんの塔頭(小さなお堂)がありました。今の東海寺(北品川三丁目)は、明治時代になってから、その塔頭のひとつだった「玄性院」がお寺の名前を引き継いだものです。そのため、七不思議に出てくる大池やビャクシンなどは、現在何も残されていません。
広報しながわ 平成20年(2008)10月1日 第1684号 掲載
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